COLUMN
コラム記事
梅小路醗酵所でアドバイザーを務めております、ハッピー太郎こと池島幸太郎です。
今回のコラムは前回に引き続き「ねさし味噌」で知られる徳島は三浦醸造所さんのハッピー太郎醸造所研修の様子をお届けします。
どうしてここのコラムで書くかというと、梅小路醗酵所では三浦醸造所さんの商品が扱われているからです!
特にねさし味噌はもはや発酵食品の絶滅危惧種と言ってもよいくらいのもので、蒸した大豆を潰してナマコ状にしたものに天然の毛カビがつくのを「ねさし」ながら待つ、驚異の仕込み方なのです。
天然菌と仲良しの職人三浦さんに教えることなんてないのではないかと思ったのだけれども、実は三浦さん、本格的によその醸造所を見学するのは初めてのことで、ワクワクして仕方ないとのこと。すべてをお見せすることにしました。合計4日にわたり、滞在されました。スゴイ気迫です。
(なお、これはハッピー太郎醸造所クラウドファンディングのリターン「糀作り研修」を三浦さんがご購入いただいたからで、普段は研修を受け入れているわけではありません。)
まずは醸造所のご案内。米洗いをしていただきます。三浦さんは蒸し器に興味津々。
ハッピー太郎はこのせいろの工夫をお話しします。
せいろの一番下にこの穴があいた板をかますことで、蒸ムラを防ぎ、蒸気圧を高めていることを説明。
「この穴の径と板の大きさの関係は??」「いや、そこは感覚で、丸い和せいろの裏側のイメージで。これくらいかなってあけたら、たまたまうまくいきました。」
三浦さん、結構しっかりつっこみます。
蒸米を冷ますところ。普段はこんな風に冷ますわけではないそうで、
「あ~、なるほど、こうすると蒸米が下に落ちにくいわけだ。でも、こんな分厚い堆積具合で麹菌が蒸米1つ1つに付くんだろうか???」「なので、ここでしっかり米粒をほぐすことが大事で。指先をあらゆる方向に動かして、、、、」などと、お互い見解を語り合います。
翌日にはハッピー太郎醸造所大イベント どぶろくの瓶詰めがありました。糀作り以外の作業も進んで取り組んでいただけました。朝から夜までお疲れさまでした。
初めてなのに慣れるのは早い!
瓶詰めの傍ら、糀の盛、仲仕事、仕舞仕事を並行して行っていただきました。
そして出来上がりまで。糀室でたくさん語りあいました。なによりも、盛の際の麹菌の進み具合が驚きだったようで、あの麹菌のつけ方で、すべてのお米に菌糸がきちんとついていることを褒めてくださいました。
しっかり出来上がりまで見ていただきました。
やはり、三浦さんのところの糀とはまた違った味がするそうです。どちらが良いわけではなく、スタイルの違いですよね。
三浦さん、あいまあいまも好奇心のかたまりで湖のスコーレのチーズ熟成庫の前でずっと考え事してます。
同行された奥様が「あれは、あそこの結露している部屋が、どうしたら結露せずにすんだのか、色々と考えながら見ているのだと思いますよ」と解説してくれました。笑 一般のお客様はまず見せない姿です。面白いよ、三浦さん。
そして、休み時間には長浜の街をあちらこちら赴いたり、じっとされていることはありませんでした。
最後にみんなで記念撮影。
三浦さん、僕よりも随分年上なのですが、全く偉そうにすることなく、好奇心の塊でした。こちらの良いところを褒め、そして、農家としてのプライドもたまにチラッと見せながら、押しつけがましいところは全くない、とても話しやすい方でした。ひょうひょうとされているのですが、この方は醸造所の建物も作ってしまうし、無農薬の米や大豆の農家だし、天然菌の味噌を作るし、醬油も作るし、、、、、スーパー醸造家なのです。でも自分が有名になりたいとかそういうことではなく、自分が納得すること、面白いと思うことに邁進する。ちょっとマイペースすぎるくらいなので、それを、奥様が支えてらっしゃる(たまには叱咤しながら笑)のですね。
今回、クラウドファンディングのリターンという形でしたが、醸造の技術者との本気の交流は私にとっても意義深く、刺激になりました。いずれ機会をつくって、三浦さんのところへぜひ研修へ行きたいと思います。その時はぜひここでご報告しますね。
*三浦醸造所さんの商品は梅小路醗酵所でお取り扱いがございます。ぜひどうぞ!
【伝える人】 ハッピー太郎 / 池島幸太郎
酒蔵の蔵人12年の経験を活かして独立。麹をメインとした発酵食品工房を滋賀県彦根市で開業。https://happytaro.jp/
糀・味噌製造をメインとして鮒寿司なども製作。手前味噌の会では痒い所に手が届く解説で好評。発酵のコツを言葉にすること、発酵研究の文献探索、発酵職人探訪が好き。2021年12月に長浜市「湖のスコーレ」へ移転して、どぶろく醸造の免許をついに取得し、醸造を開始している。