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醗酵裏話「技術者との交流〜三浦醸造所編 〜その1」

醗酵裏話「技術者との交流〜三浦醸造所編 〜その1」

梅小路醗酵所でアドバイザーを務めております、ハッピー太郎こと池島幸太郎です。
今回のコラムは「ねさし味噌」で知られる徳島は三浦醸造所さんがなんとハッピー太郎醸造所へ麹作り研修に来られたので、その時の技術者同士の語らいなどを報告させていただきます。

三浦さんと共に。

三浦醸造所さんをご存知でしょうか。徳島県阿波市の醸造所です。以下、HP(通販サイト)より引用

創業1948年、徳島県阿波市にある小さな醸造所です。地元に伝わる数え歌にも歌われた味噌・醤油に加え、五代目杜氏自らが無施肥無農薬で育てた米だけで仕込む甘酒も製造しています。五代目は15年かけて醸造蔵も自分で建て、自然農にも取り組んでいます。 日本の誇る発酵文化を大切に守り次世代へ継承していくこと、安心安全で豊かな食を提供することを使命とし、原材料を栽培する自社農場の土づくりから製品の醸造・充填までを信念と責任を持って行うことを企業理念に掲げています。

そしてここは「ねさし味噌」を作っているんです!これ、、、、なんだと思いますか。

これは一体、、、??

「ねさし味噌」とはこちらに解説されてます。

  1. 大豆の浸漬(大豆を水に浸して充分な水分を含ませる)
  2. こしき(大きなせいろ)で蒸す。
  3. 蒸しあがった大豆が冷めないうちにミンチの機械に通してすりつぶす。
  4. すりつぶした大豆をなまこ状に成型し、放冷する。
  5. 冷めたなまこを2cm程度の厚さにカットし、稲わらのむしろの上に、斜めに寝かせながら並べる。
  6. 自然に毛カビが生えるのを待つ。(寒仕込みで40~60日程度)
  7. 十分に毛カビが生えた6を、塩・水とともに混合機に入れて撹拌する。
  8. 7を混合機から取り出し仕込み桶に入れ3年間熟成させる。

上記のように、豆麹作りにも熟成にも長い時間を必要とすることから阿波の方言である「寝さす(寝かせるの意)」の語形が名詞化し「ねさし味噌」の名がついたと言われております。

つまり、大豆を蒸して潰して整形してカットして筵の上に並べておいて、天然のカビだらけになるまで待つ、、、、という、びっくり仰天の製法なのです。昔は三浦醸造所さんの近くでも何軒か同じような製法で作っていたそうですが、今や三浦さんだけになってしまっているとか。

寝かしている蔵
お世話は完全に勘です。


豆味噌の一種ではありますが、天然の毛カビと仲良くする醸造は、日本国内でもなかなか希少なもののようで、そんなすごい貴重な技を持つ人が、わざわざハッピー太郎醸造所へ来られるという。しかも、三浦さん、別の醸造所に見に行くのはこれが初めてということなのです。

かつでハッピー太郎は梅小路醗酵所で「20年もののねさし味噌」を味見したことがあり、その深いチョコレートのような独特の風味に感激していた経緯がありますので、三浦さんに会えることを本当に楽しみにしておりました。三浦さん、本気でした。合計4日、滞在されました!そして、何より目がキラキラして、好奇心旺盛。お互い発酵話は尽きることがありません。初めてお会いしたのに、ものすごく話しやすい。

道具について

次回、どんなことを体験してもらい語り合ったか、報告させていただきますね。お楽しみに!

ちなみに、「ねさし味噌」三浦醸造所さんの商品は、梅小路醗酵所で買えますよ。どうぞよろしくお願いします!

【伝える人】 ハッピー太郎 / 池島幸太郎

酒蔵の蔵人12年の経験を活かして独立。麹をメインとした発酵食品工房を滋賀県彦根市で開業。https://happytaro.jp/
糀・味噌製造をメインとして鮒寿司なども製作。手前味噌の会では痒い所に手が届く解説で好評。発酵のコツを言葉にすること、発酵研究の文献探索、発酵職人探訪が好き。2021年12月に長浜市「湖のスコーレ」へ移転して、どぶろく醸造の免許をついに取得し、醸造を開始している。