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生酛造りに初挑戦①

生酛造りに初挑戦①

梅小路醗酵所でアドバイザーを務めております、ハッピー太郎こと池島幸太郎です。

私が醸造している「どぶろく」で初めて「生酛(きもと)造り」に挑戦したので、そのレポートをしたいと思います。
これを書き始めているのは、実はそのもろみ(どぶろく)の瓶詰めの早朝。つまり商品になるまで漕ぎ着けたということで、情報をオープン!致します。いや〜、仕込み初めて約2ヶ月、、、、。長かった。

私にとって「生酛(きもと)」は憧れで。本格的日本酒造りの代表みたいなイメージで。生酛造りができる杜氏さんは大尊敬していて。だから、今回念願なのです。

さて、そもそも皆様は「生酛」ってご存知でしょうか。こちらの読者は日本酒マニアではないけど発酵に興味がある人たちと仮定してお話しします。

「生酛」を簡単に説明すると「酒造りのスターターにおいて乳酸発酵させる作り方の一つである」ということです。と書くと、「いやいやいや、生酛とはな、、、、」と語り始めそうな顔が何人も思い浮かびます。それくらい生酛って技術的にも文化的にも歴史的にも奥深いもので、その奥深さについて私が把握していることはわずかですから、ここでその面を語れる資格はありません。なので、発酵食品好きの私ならではの解説をしたいと思います。

さて。生酛とは、酒造りのスターターでお米を乳酸発酵させるって書くと、どういうこと?って思う人が大半だと仮定します。お米の乳酸発酵というのはまあ、お米のヨーグルトっぽいのを作るということ、どろどろのお米の酸っぱいやつを作るってことです。ほんと、酸っぱくなります。

酸っぱくなったよ〜♪

どうして酸っぱいやつをつくるのかというと、皆さんはお漬物を作ったことはおありでしょうか。柴漬けとかカブの糠漬けとかたくわんとか、私は白菜のお漬物大好きですね。ちょっと酸っぱくなりすぎたものもスープにしたりして。そうそう、しっかり酸っぱくなった乳酸発酵のお漬物は、保存性が増します。重石をしておいたら腐らないものも多く、「腐らない」とは「雑菌に侵されない」という状況です。

酸っぱくなった=強い酸性状況→腐りにくい

この仕組みを米の酒造りでも用いているのが、乳酸発酵の酒造りであり、その中の一つが生酛なのです。他、生酛の簡略版「山廃酛」、生酛よりも歴史の古い「菩提酛」もありますが、一旦置いておきましょう。

しかし、この生酛。通常の乳酸発酵漬物とは違った難しい一面が。それは

「無塩である」

ということ。一部の乳酸発酵漬物のなかには長野の「すんき」や、徳島の「阿波晩茶」(お茶の漬物ね)という塩を使わない乳酸発酵もございますけれども、一般的な漬物は「塩」を効かせます。塩のフィルターを噛ませることで、腐敗ではなく発酵に導くわけですね。塩って本当に便利なのですよ〜、安心安心。お味噌も塩をたくさんいれますよね。安心安心。

だから、逆に言えば

「お米を無塩で安全に酸っぱくする」ことがとっても怖くて、心のハードル一気に高くなる。無塩ってだけで、どんな雑菌が入ってくるのか検討もつかない。いや〜こわいこわい。やったことないから、こわいこわい。怖すぎる〜!!

酒造りの技術者ではあるけれども、「失敗は避けるべきである」経営者でもあるので、ここはベテラン技術者を招聘することにしました。

その名を「日置大作」氏と言います。

おどける日置氏。


日置さんは、福井県大野市で「花垣」という日本酒を30年近く醸してきた名杜氏です。今年、その「花垣」南部酒造場を卒業されたので技術指導を仰ぐことになりました!そしてさすが名杜氏、大成功だったわけです。

その仕事のお話は、、、、、生酛造りに挑戦2 でお話ししましょう!お楽しみに〜。

【伝える人】 ハッピー太郎 / 池島幸太郎

酒蔵の蔵人12年の経験を活かして独立。2017年に麹をメインとした発酵食品工房を滋賀県彦根市で開業。糀・味噌製造をメインとして鮒寿司なども製作。手前味噌の会では痒い所に手が届く解説で好評。発酵のコツを言葉にすること、発酵研究の文献探索、発酵職人探訪が好き。

2021年12月に長浜市「湖のスコーレ」へ完全移転して、どぶろく醸造の免許を取得し醸造を開始。中でも副原料入り低アルコールどぶろく「something happy」シリーズは今までにない体験の飲み物として注目を集めている。https://happytaro.jp/

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