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コラム/最新情報
こんにちは、いつもありがとうございます。
梅小路醗酵所の山口です。
さて、醗酵所主催の特別イベント、
全国の杜氏や麹のプロに麹作りや発酵の話を伺う「酒蔵の出張麹作りproject」。
2025年11月30日(日)、第四回の講座を開催いたしました!
このプロジェクトは、麹が好きな発酵ファンの皆様に、より広く深く発酵の世界を知っていただきたいという想いから立ち上げたもの。
普段なかなか聞けない「発酵のプロ」の生の声を通して、新しい発見をしていただける企画です。

第四回 新しい出会い白麹編 豊永蔵(熊本県)
今回のテーマは、梅小路醗酵所でまだ作ったことがない「白麹」。
白麹を扱う焼酎蔵である豊永酒造に熊本県からお越しいただきました。
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〈白麹とは〉
黒麹菌の突然変異によって生まれた麹菌の一種であり、クエン酸を大量に生成する特徴を持ちます。黒麹と比べて胞子が白いことからこの名が付き、明治時代に河内源一郎氏が発見しました。白麹を用いた焼酎は、そのクエン酸によりスッキリとした飲み口と穏やかな香りが特徴であり、本格焼酎造りの主流となりました。
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白麹の歴史

普段は黒麹を中心に取り扱う私たちにとって、白麹の製麹はほとんど未知の世界。
参加者の皆さまと同じように、スタッフも真剣な表情で白麹について学びます。
白麹は、焼酎造りの歴史の中で生まれた比較的“新しい”麹。
黒麹の突然変異で生まれ、黒麹より扱いやすいということから日本の焼酎作りでは白麹が主流になりました。
そんな麹について、長年の経験者だからこそ見えるさまざまな見解を教えていただきました。
白麹菌は、黄麹と違い米の表面に菌糸を張って成長していく。
しかし精米して表面を削りすぎると、菌が伸びるための足場を失ってしまい、製麹が難しいため
豊永蔵では、あえて玄米を使うことが多いのだそう。
これは、米を磨けば磨くほど綺麗な酒になる日本酒とは、ある意味真逆とも言えます。
玄米のまま扱うことで麹菌が力強く成長し、香りや旨味の厚みが生まれるという話に、参加者の多くが驚きの表情を浮かべていました。
また、蒸し工程について語られた「和釜」の話も非常に示唆に富んだもので、
豊永杜氏は、和釜で蒸すことで、蒸し上げの最後に水分が減り、乾いた蒸気に近い状態で米を仕上げることができるとのこと。この“乾かすように蒸す”工程が、麹作りにおいて極めて重要であるという言葉には、発酵の本質が凝縮されていました。
「昔の人は本当にすごかった。」
杜氏のこの一言が、今回のテーマと言っても過言ではありません。
今では機械化された工程も、かつてはすべて人の感覚と経験によって積み重ねられた知恵の結晶。
日本の発酵文化は、“人の観察力”と“自然との対話”から生まれた技術なのだと、改めて深く感じる時間でした。



その後は実際に麹室へ入り「種切り」を体験。
粒麹をそのまま入れてしまうという、焼酎ならではの日本酒の麹作りとは全く違う種付け方法にも驚きです。
実は、この皆様で種切りをした白麹が、後々あんなことになるとは
この時は微塵も思いませんでした…。
発酵を楽しみながらフリートーク

体験のあとは、発酵ランチプレートと豊永蔵の焼酎4種を利き酒しながらのフリートーク。
豊永さんの知識と知恵に質問が溢れ、なかなか皆様お箸をすすめる隙がありません。笑
あまり焼酎を飲まないという方も、今回のお話で興味が湧いたそう!
とっても喜ばしいお声の一つです。
順風満帆で終了!…と思いきや。。。

そして大盛況の中、無事終了!
皆様にはお買い物もしていただき、楽しく帰っていただきました。
その後はスタッフが丁寧にこの白麹を育て、発送すれば完了!のはずだったのですが…。

3日目の朝、見てみると
なんとまだらに黒い胞子が…!?
こちらの詳細については別の記事で改めてまとめたいと思います。
ただひとつ言えるのは、初めての挑戦には予想外の出来事がつきものだということ。
深く反省しつつも、ここからさらに学び、
より良い発酵体験をお届けできるよう努めてまいります。
教科書では学べない、発酵と酒造りの世界。
色んな意味で多くを学ばせていただいた第四回の講座。
改めて、今回ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました!
