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コラム/最新情報

こんにちは、いつもありがとうございます。
梅小路醗酵所の山口です。
さて、醗酵所主催の特別イベント、
全国の杜氏や麹のプロに麹作りや発酵の話を伺う「酒蔵の出張麹作りproject」。
2025年8月20日(水)、第三回の講座を開催いたしました!
このプロジェクトは、麹が好きな発酵ファンの皆様に、より広く深く発酵の世界を知っていただきたいという想いから立ち上げたもの。
普段なかなか聞けない「発酵のプロ」の生の声を通して、新しい発見をしていただける企画です。

第三回 魅力いっぱい黒麹編 白杉酒造(京都府)
今回のテーマは、梅小路醗酵所でも注目している「黒麹」。
京丹後で人気急上昇中の酒蔵、白杉酒造の白杉杜氏にお越しいただきました。
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〈黒麹とは〉
かつてすべての焼酎は黒麹を使っていたとも言われ、腐敗を防ぐ役割を果たす「クエン酸」を多く含む麹。
特に甘酒にしたときには、酸味を感じるスッキリとした味わいで一度飲むと忘れられない美味しさ。
今の時代の私たちの生活に取り入れたい麹の一つとしてこれから注目の麹です。
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白杉杜氏の哲学

数々の業界常識を覆してきた白杉酒造代表の白杉悟さん。
「酒米を使わない」「様々な麹をためらわず使う」「米も自由に選ぶ」——
その姿勢だけを聞くと、まるで破天荒な挑戦者のように思えます。
ところが実際にお会いすると、とても和やかで素朴なお人柄。
顔に「優しい」と書いてあるような柔らかな雰囲気に、思わず驚かされます。
そしてお話を伺ううちに分かったのは、白杉さんのお酒は決して「突拍子もない思いつき」から生まれたものではないということ。
すべては必然から導かれた酒造りでした。
白杉さんが目指すのは「ナンバー1」ではなく、京都・丹後だからこそできる酒造り。
「自分たちにしかできないオンリー1とは何か?」
その問いを胸に、常識に「?」をつけながら歩んできました。
そうして黒麹や複数の酵母を組み合わせる独創的な手法に挑戦し、
「MIRROR MIRROR」や「CHIMERA」といった銘柄が誕生。
いまや海外でも高く評価される日本酒へと成長しています。
教科書には載っていない酒造りの哲学。
麹の新しい可能性を追い続けてきた、その歩みを知ると、きっと日本酒の見方が少し変わるはずです。
麹のこだわりについて

今回の参加者の約8割は「麹好き」の方々。
最初は「日本酒の話、どこまで掘り下げようかな」とも思ったのですが
日本酒造りの中に潜む「哲学」をぜひ皆様に感じていただきたいとの思いもあり、1時間たっぷりお話をお伺いしました。
その中でもとりわけ驚きだったのは、黄麹と黒麹を“同じ麹室で”育てていること。
「普通は分けてやらないとだめじゃないんですか?」と、参加者からも驚きの声が。
でも白杉酒造にとっては、それが必然。伝統に縛られず自然体で新しい挑戦を続ける姿勢がそこにありました。

その後は実際に麹室へ入り「種切り」を体験。
一粒一粒に命を吹き込む感覚に、皆さん真剣な表情。
醗酵所の作り方と比較しながら発酵に「絶対的な正解はない」と実感できる貴重なひとときでした。
発酵を楽しみながらフリートーク

体験のあとは、発酵おつまみプレートと白杉酒造の日本酒4種を利き酒しながらのフリートーク。
次々と飛び交う質問に白杉さんが答えるのに夢中で、ほとんど飲む暇がなかったほど(笑)。
その真摯な姿勢と飾らない人柄に、改めて魅了されました。

そして実は、
白杉さん自身、普段こうした講座や講演会にはほとんど登壇されないのだそう。
業界でも注目される存在でありながら、静かに酒と向き合い、現場に立ち続ける白杉さん。
そんな方から直接話を聞ける機会は、本当にレアで貴重な体験でした。
また、同席していた梅小路醗酵所の麹づくりスタッフにとっても、この時間は大きな学びの場に。
普段のルーティーン作業に疑問を持つ、いい機会になったかなと思います。
最後に

梅小路醗酵所の黒麹甘酒を手にして帰る参加者の笑顔。
「日本酒は苦手だったのですが、今日の話を聞いて買って帰って飲んでみます。」
「杜氏はもっと頑固親父のイメージだったけどこんなに気さくな方がいるのだったらまた講座を受けたいと思います。」
「貴重な白杉さんの話を聞けてよかった。」
「発酵ってやっぱり奥が深くてとても面白かった、また開催してほしい。」
たくさんのお声をいただき、私としても大変嬉しく思います。
——教科書では学べない、発酵と酒造りの世界。
その一端に触れられた一日を、参加者もスタッフも共に共有できたことが、何よりの財産になったと思います。
スタッフも私自身も多くを学ばせていただいた第三回の講座。
改めて、今回ご参加いただいた皆様、そして白杉杜氏、本当にありがとうございました。
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