COLUMN
コラム記事
醗酵裏話「お酒の品質表示について」
2022年4月7日
梅小路醗酵所でアドバイザーを務めております、ハッピー太郎こと池島幸太郎です。
ハッピー太郎、今回はお酒の品質表示のルールについて解説しようと思います。私が4月1日にリリースした「ハッピーどぶろく」を例に、どこがどうなのか、ご説明します。本当にこれ、ちゃんとしなきゃ、認められないんです。どこに?「税務署に!」
こんなこと、苦労しているのは業界人だけなので、皆さんご存知ないでしょう。
まずはこれが、今回正式に認められた表示です。
そして、こちらが認められなかった表示です。
正直、書いてある内容は一緒ですが、下はアウト。そして、この判断は全国共通というわけでもなく、税務署さん所轄の地域の状況により判断が違うようです。もしかすると、上の表示でも指導対象という地域があるのかもしれません。これはもう、所轄の税務署さんのご判断に委ねるしかありません。(我々はご指導いただく立場であり、交渉する余地はほぼありません。もちろん、楯突くつもりもありません。ハイ!とお応えするのみです。)
ここでお話しするのは
1 そもそも守らねばならぬこと
2 何がOKで何がアウトか。
です。
1 そもそも守らねばならぬこと
こんなページがあります。
酒類の表示方法チェックシート
これに基づいて、チェックしていくわけです。チェックして、表示ラベルと一緒に提出します。
私はその中のこちらをチェックしました。どうです。細かいでしょう?
例えばこちら。
今回、私のどぶろくの酒類の品目は「その他の醸造酒」です。
文字の数 4以上
内容量 360ml 以上
ということに該当しますから、10.5ポイント以上の文字の大きさが必要で、
今回はゴシック体で表示しました。
そう、この表示はあくまで消費者が読みやすいようにするべきものであります。デザイン云々ではなく、「読みやすいものか」が大事です。
数字はアラビア数字で、とか。他にも色々とありますね。詳しくは上のリンクをご覧くださいね。
2 何がOKで何がアウトか。
今回問題となった部分を拡大しますと、
・表示義務がある内容と、義務のない内容が一緒になっている
・「原材料」ではなく、「原材料名」である。
・「原材料名 米(国産)」と書かねばならない。原料米が滋賀県長浜市のものであると別の場所に書いてはいるが、あくまで「原材料名」のところに記載しなければならない。
・米糀の「糀」もハテナ?である
・無添加表示は避けた方が無難
・要冷蔵と書く場合は、温度も表示すること
・表示義務のある内容は、その他の義務のないものと区別すること。消費者がわかりやすいようにしなければならない(枠で囲むなど)
以上のことを踏まえて、改正した結果がこちらです。
変更しなきゃいけないとわかって、結構残念でしたが、
でも、これ、結構スッキリしましたよね。確かに、羅列してある感の過ぎる上のものよりも、下の方が消費者に良いサービスを提供しているような気がします。結果、税務署さんのご指導は、よかったなあと思う次第です。
罫線より左側が、消費者や税務署さんに絶対お知らせしないといけない内容で、まあ、右側はどうでも良いということですwww
法律上クリアにしなきゃいけない部分と、お伝えしたいメッセージの部分と境界が全く違うって、面白いものですね。自分としては右側の方をいかに伝えるか、で、美味しさと売り上げが違ってくると思っています。
今回は業界人しか知らないと思われる、表示方法について、ミニ解説いたしました。もちろん、表ラベルの印象はとても大事なのですが、皆様にはぜひ裏ラベルもぜひご覧いただき、よかったら、「あ、こっちはこの表示だけど、こちらはこうなってる!!」的な楽しみ方もしてみてください。
なかなかマニアックで面白い、ある意味「酒のつまみ」になるのではないでしょうか。
【伝える人】 ハッピー太郎 / 池島幸太郎
酒蔵の蔵人12年の経験を活かして独立。麹をメインとした発酵食品工房を滋賀県彦根市で開業。https://happytaro.jp/
糀・味噌製造をメインとして鮒寿司なども製作。手前味噌の会では痒い所に手が届く解説で好評。発酵のコツを言葉にすること、発酵研究の文献探索、発酵職人探訪が好きです。2021年12月に長浜市「湖のスコーレ」へ移転。どぶろく醸造の免許をついに取得し、醸造を開始している。