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コラム記事

生成AI時代に発酵屋として何を思う。

生成AI時代に発酵屋として何を思う。

梅小路醗酵所でアドバイザーを務めております、ハッピー太郎こと池島幸太郎です。

みなさん、chatGPTはお使いですか?
「ハッピー太郎醸造所の概要を250字で提供してください」なんてことを聞くと、まずネットを検索してたくさんの情報から取捨選択しある程度のもの、少し手直しすれば使えるものを作ってくれます。3回程度こちらが修正しヒントを与えると学習して、もはや適切なものを作ってくれますね。


どうです?いい感じでしょう?

そのほかにも、「事業ミッション作りました。どう思いますか?」という質問にも結構的確に答えてくれます、一瞬で。なので、中途半端にコンサルタント頼むより、こちらのほうを選択するフェーズの事業者もいそうだなと思います。

本当に便利ですね。びっくりの時代です。

生成AI関連で言うと、AI HOTOKE という、アプリもあります。
人生の悩みや愚痴なんかも聞いてくれます。そして経典を根拠にお答えしていただけるのです。これはなかなかすごい。間違った引用をすると「仏教への冒涜」みたいに炎上しそうだし、それはとんでもないと思いますから、いかに「どんな質問に対しても仏教的観点からは正確な答えが可能である」ということだろうと思います。


最近は進化がとまらなくて動画もオーダーしたらある程度のものを作ってくれるサービスも誕生していますよね。CMなんて生身の人を起用せずに制作することが標準になるのかもしれません。

膨大な情報を処理して要求に応える。
とか
正確性や再現性を追求する。
ということに関して、生成AIはもはや「人知を超えている」存在になりつつあるのかもしれません。そして、「いかにバグをなくすか」という方向性で改善されていっていると思います。
これらの方向を見ていると、生成AIは、「かつて、人間がなりたかったもの」なのではないでしょうか。

日本の学校教育は概ねそういう方向で統一されていた時代を私は過ごしました。
「効率よく大量にこなせる」
「ミスが少ない」
「改善要求をすればただちに応えられる」
そういう人間が成績良く、いわゆる学歴社会で上位に入れました。
そして、私もこの方針に適応可能だった人間です。恩恵を受け、学校内での居場所つくりも簡単だったように思います。「勉強ができる」というだけで先生からも友人からも評価されるからです。

さて。
生成AIが発達してきた現代、かつての評価軸はもはや価値が低くなってきたのではないでしょうか。上の3つ「効率よく大量にこなせる」「ミスが少ない」「改善要求をすればただちに応えられる」能力は早晩、生成AIによって支配されるでしょう。つまり「替えが効く」能力なのです、それらは。

そんな時代だからこそ人間の価値ってなんでしょうって考えてしまいます。替えが効かない価値ってなんでしょう。

それを発酵から見ていますと、一つ参考になるのが「味噌」です。
それも「手前味噌」。一つとして同じもののない、かけがえのないもの。


ハッピー太郎醸造所は手前味噌の会を続けて7年ほどたちますが、同じ会場で同じ配合で仕込んだとしても、全員違った味になります。これが面白い。仕込んだ人の手が違うからか、持って帰ってもらって置いておいた熟成場所が違うからか、なんなのか。そして、大概の人が「私のお味噌が一番美味しい」と思うのです。
一つとして同じものがないというのは、「正確性にかける」ということです。でもそれが良いのですね。

そして。実は毎年少しづつ違うんですよね、手前味噌の味って。それもある意味「バグ」なのです。それなのに、「やっぱり私のお味噌は美味しい」と思える。なんなのでしょうね。

唯一無二の、替えがきかないもの。1点もの。
再現性がいまいちでもそれはそれで楽しめる。
気長に待つ必要がある。


これが「手前味噌」の良さですが、
これ、、、、、、「人間」そのものではないのでしょうか。
人は本来それぞれが「替えがきかない」ものです。
1人として同じ人はいない。よくミス(バグ)をしますね。
そして究極的には、もはや、正確性や再現性のなさ(バグ)こそが人間の魅力であり本質ともいうべきことなのではないか。
じゃあ、そのバグの掛け算が偶然うまくいったときに、圧倒的な価値を産むのかもしれない。

な〜んてことを、発酵屋は思うわけです。
学生時代勉強が比較的できた私でしたが、「バグこそが価値がある」なんてことを言い出すなんて。人生は面白い。

みなさん、この生成AI時代だからこそ、お味噌を仕込みましょう。
きっとそこに、気づきがあります。美味しいしね。
はい、それが言いたかっただけです笑


【伝える人】 ハッピー太郎 / 池島幸太郎

酒蔵の蔵人12年の経験を活かして独立。2017年に麹をメインとした発酵食品工房を滋賀県彦根市で開業。糀・味噌製造をメインとして鮒寿司なども製作。手前味噌の会では痒い所に手が届く解説で好評。発酵のコツを言葉にすること、発酵研究の文献探索、発酵職人探訪が好き。

2021年12月に長浜市「湖のスコーレ」へ完全移転して、どぶろく醸造の免許を取得し醸造を開始。中でも副原料入り低アルコールどぶろく「something happy」シリーズは今までにない体験の飲み物として注目を集めている。https://happytaro.jp/

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